2008年4月20日日曜日

デーモンシステム講習会




4月17日から大阪で星野亨先生のデーモンシステムの一日半の講習会に行ってきました。100名くらいの先生が参加されていて、この講習会の人気が伺われました。大変よくまとめられた講習会で勉強になりました。弱い力で生体にあった治療を行うデーモンシステムの概念を系統だてて説明され、ある程度理解することができました。一時このブラケットを普及させるため、治療期間の短縮をうたっていましたが、この講習会ではほとんどそういったことは論じられず、好感が持てました。いまでもデーモンシステムで治療すれば半分の治療期間で終わらせるといった歯科医院の広告がありますが、星野先生の症例でもある程度は治療期間がかかっており、きちんとした治療をすればそれほど短縮にはつながりません。またこういったことを全面に出して患者獲得を行うのはよくないと思います。

デーモンブラケットのような結紮しないタイプのブラケット(セルフライゲーション)は口腔衛生状態がよい、歯の動きがよい、弱い力で歯を動かせる、チェアータイムが短いなどの利点がある他、最新のワイヤーと組み合わせることで来院間隔が広がる(2ヶ月の1回)、痛みが少ないなどの利点があります。一方、デーモン3という半分透明なブラケットがありますが、構造上メタルでなくてはいけなく、審美性に欠くという欠点があります。前のブログを読んでもらえばわかりますが、セルフライゲーションの最大の利点、ワイヤーとブラケットの摩擦がない点で言えば、治療初期には大変重要ですが、治療中期からは必ずしもこの利点は関係なくなります。星野先生の講義の中でも、前歯を中に入れるのにセルフライゲーションブラケットであれば弱い力で引けるのではとデーモン先生に尋ねると、それでは引けないという答えだったそうです。私のところでは前歯を中に入れるにはループを使っていますが、この方法では全く摩擦は関係ないのですが、あまり弱い力では動きません。

大量の患者をスタッフに治療させる形式(アメリカ)では、この方法は治療の効率化、例えば治療回数を減らすことができる、結紮などのよるトラブルを減らせる、システム化によりスタッフに任せても良好な結果が得られるなどの利点があり、普及していくと思います。ただ日本では矯正患者も少ないこともあり、必ずしも治療の効率化を進める必要もありませんし、何よりメタルのブラケットを日本の患者に受け入れさせるのは本当に難しいと思います。25年前、Ormcoのエッジロックという同様のブラケットが姿を消した最大の理由はここでした。アメリカではメタルのブラケットへの抵抗は少ないでしょうが、日本では25年立っても状況は変わらない、あるいは舌側矯正やインビザラインなどより審美性を重視した流れになっています。今後の発展を期待したいと思います。その他にもいろいろと治療の参考になることが聞けていい講演会でした。一部は是非とも実践したいと思います。

講習会のついでに、京都国立博物館で行われていた河鍋暁斎回顧展を見てきました。肉筆画を中心とした初めての大規模の展覧会で、河鍋暁斎の画業をあますことなく伝えています。このひとの驚嘆すべきところは、20cmくらいの小品も20mの大作も全く同じような精密さで描ける点で、とくに小品の多くは驚くべきもので、着物の柄、格子の柄などは0.5m間隔の線が細かく描かれています。今の画家ではとてもできない技術で、わずかに陶器の色付け士になせる技だと思いました。あらゆる画法に精通しており、その発想も独創的ですが、明治期以降の日本人にはなかなか理解しにくいようです。当時のひとは、作品を楽しむというより、床の間に飾るのに力点が置かれていたため、河鍋暁斎の絵はあまりに個性が強すぎると思います。一方、画帳というのはこっそり眺めるもので、細部にこだわる必要もあったのでしょう。ただ絵があまりに小さく、後で買ったカタログで初めて確認できたものも多く、会場は比較的空いていたのになかなか行列が進みませんでした。とくに14歳で亡くなった少女を供養して制作した「地獄極楽めぐり図」は傑作で、これを見るだけでもこの展覧会の価値はあると思います。

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