2011年3月26日土曜日

震災と自衛隊



 今回の震災ほど、国民に自衛隊の存在をアピールしたことは戦後なかった。被災者からすれば、自衛隊の存在がどれほど心強いと思った方も多いと思うし、自衛官の隊員の献身的な働きには、いくら仕事とはいえ、頭が下がる。確かに社会党政権下の阪神大震災に比べると自衛隊の出動も早かったとは思えるが、それでも実際の初動活動は米軍に比べると劣る。政府の即戦対応の違いと思われる。アメリカでは大統領は軍の最高指導者で、命令系統のスピーディさが普段の訓練、実践を通じてかなり確立しているが、それに比べると菅直人内閣の対応は、どうもちぐはくな感じを受けた。軍指導者としての経験や自覚がないことによるのであろう。もはや憲法違反であるから自衛隊を認めないとする社会党、共産党の論理は、とてもじゃないが、世論とは遊離しており、こういった国難の状況で国民が頼るのはやはり軍隊であろう。

 未だに軍隊の保有は憲法九条に違反していると叫ぶ一部の人々がいる。最近はさすがに、自衛隊不必要とは言わなくなったが、それでも災害救助に限定した存在にしろとして言っている。確かに東京消防庁のような組織も当然必要であろうが、こういった消防、警察と自衛隊は全く組織が異なり、厳密な階級のもと、命令系統が上から下へと直線的に繋がっている。師団、連隊、大隊さらに中隊は、刻々と変わる戦況に応じて、参謀本部からの命令を実践していく。これが軍隊である。消防隊は上からの命令に対して抗命しても、罪にはならなし、むしろ現場での判断が上層部の判断より優先される。それに対して軍隊では抗命は基本的には禁止され、自衛隊法第57条で「隊員は、その職務の遂行に当つては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない」とされている。今回のような非常時では、死も覚悟するような状況におかれる可能性もあり、そういった状況では軍隊以外は活用できない。このあたりの覚悟にアメリカ大統領と日本の首相に一番差があろう。

 Japan Ground Self-Defense Force(陸上自衛隊)、Japan Maritime Self-Defense Force(海上自衛隊)、Japan Air Self-Defense Force(航空自衛隊)という名称はもういいだろう。単純にJapan Army陸軍、Japan Navy海軍、Japan Air force空軍でいいのではないか。外国ではみんなそう呼んでいる。この中でもひどいのは海上自衛隊のMartimeは沿岸という意味で、これでは海上保安庁くらいの意味しかない。こういった国軍論争は、右翼的だと誹りを受けかねないが、普通に考えても、誰も自衛隊が日本軍ではないとは思わないであろうし、中国も含めた周囲国もそう思っている。ただ日本の一部の人々が反対しているのである。

 私自身、こういった問題に対して特に強い思い入れはないが、それでも日陰ものとして扱われてきた自衛隊に関しては、こういった機会に是非存在自体が誇らしいものになってほしい。憲法改正などの手段に、まだまだ期間はかかるかもしれないが、少なくとも階級名については伝統的な名称にすぐに変更すべきであろう。1尉、1佐では、誰もわからない。大尉、大佐の方がよほど馴染みがある名称で、戦争に負け、旧軍とは違うといっても、慣れ親しんだ名称まで訳のわからないものにしておく必要はない。また幕僚長など将官に至っては、何が何か全く解らず、役職名しかない。大将、中将、少将などの将軍名をきちんと名乗った方が責任の所在がはっきりして運用上もうまくいきそうな気がする。階級名の変更は国会審議で簡単に変更できるので、早急の改善を求める。

 同時に金鵄勲章も是非復活してほしい。これは軍人として抜群の功をあげたものに与えられる最高の勲章であり、イギリスのヴィクトリア十字章やアメリカの名誉勲章に相当する。日本の金鵄勲章は、大戦末期には死後授与だけであったが、本来は相当額の終身年金がつくもので、名誉だけでなく、お金の面でも価値があった。今回の震災においても危険を顧みず任務を行った隊員には、危険業務従事者叙勲が受章されると思うが、これは自衛官だけでなく、消防署員、警察官も含めた制度である。やはり自衛隊員、軍人のみの勲章があっても良さそうだし、多くの国もそうであろうが、唯一日本には軍人の武功に対する叙勲制度はない。これではさびしい。

 弘前の第39普通科連隊も現在、全力で震災地での活動を行っている。感謝したい。

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