2012年7月16日月曜日

日英武器開発と原潜



 太平洋戦争、第二次世界大戦以来、大国同士の戦争は起こっていない。朝鮮戦争、ベトナム戦争など、ソビエト、中国、アメリカなどの大国が朝鮮半島、ベトナムなどの部外地において代理戦争をおこしたことはあるが、大国同士が直接戦うことはない。その損害、消耗があまりに大きく、躊躇された結果であろうし、今後とも大国同士が直接戦う可能性は少ない。
一方、軍備は、大国間のパワーバランスに重点が置かれ、外交上の恫喝に使われている。あまりに戦力的に劣ると、外交交渉上、不利益が生じるからである。それ故、中国が経済大国になるにつれ、アメリカとの軍事バランスをある程度とるために、近年中国が軍備拡張するのは当然の帰結である。

 日本の防衛は、先守防衛であり、他国からの侵略を防ぐのが最大の眼目である。戦後の自衛隊の存在は、この使命に尽きるのであり、これまで安い経費で十分対応してきたと思われる。できるだけ防衛費をけちりながら、その予算を経済発展に向けてきたし、これまでそのやり方で成功してきた。軍備のパワーバランス上、絶対に侵略できない状況を外交的、経済的、そして軍事的に作るのが重要であり、そしてそれをいかに安く、効率的に達成しなくてはいけない。

 日本の軍備で優れているのは潜水艦、哨戒機、護衛艦(ヘリ空母、巡洋艦)、ミサイルなどであり、本土防衛に非常に特化したシステムとなっている。特に、ミサイル技術は軍事オタク以外あまり話題となっていないが、世界的にも非常に高いレベルであり、空対空ミサイルのAAM-5や対艦ミサイルのASM-2は高い評価を受けている。殊にF2戦闘機とASM-2のコンビは中国、韓国からは非常に恐れられ、現在開発されているXASM-3は世界でも最も高性能な対艦ミサイルでマッハ3以上の高速で飛行が可能なため、撃墜は非常に難しく、より脅威となる。そのため、中国海軍の空母建造についても、自衛隊としてはあまり恐れていないようだし、ASM-3が開発された暁には、すぐに撃沈できると考えているようだ。そのため、中国の空母は今のところアメリカ、東南アジア諸国へ国威発揚、威圧以上の意味はない。

  
 さらにレーダー技術においてもガリウム・ナイトライド半導体を用いた高性能のレーダーが我が国で実用化されており、探査距離の大幅な増加が期待され、例えステルス機であろうと探査が可能とされている。強力なレーダーとミサイル、この二つがあれば、近代戦では圧倒的に有利な状況がとれる。こういった民生技術の延長上の軍事技術の有利性が日本の最も得意なところであり、隣国の中国、韓国が最も警戒する点である。軍事技術についてはかってはアメリカからの一方的な輸入であり、国内では主としてライセンス生産に甘んじていたが、ここ数年、こと電子兵器では欧米を凌駕するものもでてきているため、武器そのものを売ることはできなくても、技術のバーター取引に使えるものが増えてきた。ミサイル、レーダー技術の他、ステルス性を高める塗装、コンピューター飛行制御のフライ・バイ・ライトなど、技術的に先行しているものも多い。

 一方、現時点で、防衛上、自衛隊の最も恐れているのは、中国の空母でも、ステルス戦闘機でもなく、中国の潜水艦である。ヘリコプター空母ひゅうが、建造中の19500トン級の24DDH、あるいは新型対潜哨戒機P-1などすべて対潜水艦を目的としたもので、いささか偏向しているような気もするが、この分野への防衛に主眼が置かれている。ただ仕上げとして唯一足りないのが、原子力攻撃型潜水艦で、現在、AIPシステムを搭載した通常動力型「そうりゅう」型が建造されているが、敵国潜水艦に対する攻撃型潜水艦としては原子力潜水艦に比べると速力、持続力が格段に劣る。ここは是非、原子力潜水艦を持ちたいところであるが、我が国では原子力船むつの頓挫以来、原子力機関の開発が遅れており、実現のネックとなっている。先日、日本とイギリスで武器の共同開発がなされることになったが、おそらく日本の最もほしい技術はロールスロイス社の原子力機関と航空エンジンであろうし、イギリスのほしいのはミサイル、レーダー技術などであろう。海洋国家としてイギリスと日本は似たような状況にあるため、この協定は野田政権の唯一の成果であろう。こういった共同軍事技術開発は、お互い得意な技術があって初めて成立するもので、ようやく我が国もバーターとして取引できる技術を持ったことを意味する。

 尖閣諸島問題で中国とはぎくしゃくしているが、あんな小さな島を巡って、全国力を挙げ、全面戦争する意味は両国にはないし、可能性も極めて低い。中国海軍の空母にしても国威発揚の面が強く、日本からすれば、全く恐れる必要がない。空母の数分一程度の建造費で作れる原子力潜水艦を数隻、保有できればミサイル、レーダー、偵察衛星と相まって、完全に押さえられる。隣家とは仲良くしながら、防犯に力をそそぐというのが基本的な国家の有り様である。相手の最もいやがる武器が最も力を発揮するが、今のところ原子力潜水艦がそれに当たる。スウェーデンからAIPシステムを導入して「そうりゅう」型、通常動力潜水艦を建造しているが、ロールスロイスPWR2加圧水型原子炉をイギリスから供給してもらえば、日本での原潜誕生は早いし、通常動力型潜水艦と併用することで、中国海軍を完全に封じ込められる。さらに共同開発の噂だけでも抑止力となる。

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