2013年2月11日月曜日

日本臨床矯正歯科医会東京大会



 今週の火曜日から木曜日まで、東京の学術総合センターで行われた日本臨床矯正歯科医会東京大会に出席してきました。場所は、東京の神保町で、東京駅からは近いと思っていましたが、案外地下鉄のアクセスが悪く、東京駅から大手町、そこで乗り換え神保町いうことになり、もっぱらタクシーの利用となります。

 日本臨床矯正歯科医会というのは、日本の矯正専門医の会で、現在500名ほどの会員がいます。皆さん、ベテランの先生方ばかりで、平均20年近い開業歴を持っています。やや年配の先生が多いようです。今回の大きなテーマは、抜歯、非抜歯について何らかの会としてのコンセンサスを出すというものです。会員にアンケートを出し、その結果を報告していました。

 以前、朝日新聞社のムックに載っていた専門医の抜歯率から平均で60%前後との数値を得ていましたが、今回の結果もほぼ同じ、57%くらいだったと思います。ただバラツキは10%-90%と大きく、ベテラン、若手に関係なく、先生により抜歯、非抜歯の判断がだいぶ違うようです。この原因として、矯正用アンカースクリュー、大臼歯の遠心移動法、側方拡大、機能的矯正治療法、ディスキングなどにより以前に比べて抜歯する比率は低くなったものと思われます。また分析法によっても違ってきますが、一番大きな理由は、先生により歯列をどこまで拡大できるかという点でしょう。一般的には下顎犬歯部の側方拡大は後戻りすることは多くの研究で実証されています。となると拡大方法は臼歯部あるいは前方への拡大となります。欧米では1960年代、抜歯率が90%近かったのですが、最近では20.-30%に低下しています。おそらくは前方への拡大に許容範囲は大きくなったことによるでしょう。白人では鼻が高く、オトガイも前に出ているため、あまり歯を中に入れると、口元が引っ込みすぎることになります。また最近のエスパニック系、黒人系に俳優の影響で、やや口元が出ている方がエロチックと見られるせいかもしれません。さらに歯列が長いため、大臼歯の遠心移動のスペースも大きいようです。日本人は短顔のため奥行きは浅く、大臼歯の遠心移動や前歯の前方拡大に無理がありますが、横への拡大はある程度できるでしょう。

 私はどちらかというと、東洋人は口元が突出しているため、できれば口元を引っ込める治療、お口がしっかり閉じられるようにしたいので、抜歯率は高いと思います。ただ今回の学会で、東京の尊敬するベテランの先生とお話する機会があり、あまり口元を引っ込めると若い時はきれいだが、歳をとると、口元がさびしくなると言っていました。以前から気になっていたのは、紀子さんの口元です。確かに若い時は、口元がしまって理知的な美人でしたが、46歳になるとやや口元がさびしい気がしますし、さらにお年を召されるともっとさびしくなるかなあと思ってしまいます。

 私自身、これまで患者さんが6070歳になった時のことまで想像していませんでした。口の周りの口輪筋は年齢とともにしまりはなくなりなり、弛緩してきます。そのため、入れ歯では、やや口元を膨らませた方が、口周りのシワが伸びて若返ります。こういった見方をするともう少し前方への拡大の許容範囲を広げてもよいかもしれません。側方への拡大、前方への拡大、大臼歯の直立など少しトライしてみたいと思いますが、それでも抜歯率が30%以下なるのは難しいと思います。「矯正歯科治療に際しては永久歯の抜去が必要な症例はある」というコンセンサスは妥当ですが、あまりに当たり前すぎて、大きな意味はコンセンサスとしてないように思えます。写真はモデルの大原里恵さんですが、矯正医からみればやや口元がでていますが、この程度は今後のエージングを考えればいいのかもしれません。一般的には鼻と下の部分と上唇の角度は90度から110度と言われていますが、大原さんの場合は、90度より少し小さいでしょう。

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