2014年10月16日木曜日

正しい歯磨きの仕方







 患者さんには、毎日、正しい歯みがきの仕方を教えていますが、実を言うとこの“正しい”という言葉がくせものです。基本的に、歯を染め出し、磨き残しがなければ、どんな磨き方でもいいのです。齲蝕の発生原因を考えると、プラーク(歯垢)がなければ、齲蝕は発生せず、完全に取り除けば、理論的には齲蝕になりません。

 一方、歯周疾患については、歯肉のマッサージと歯周ポケット内の細菌除去が重要となります。最近の子供達は虫歯が少なくなってきましたが、相変わらず歯肉炎は多く、歯茎が腫れている子供達は多いようです。また成人以降も同様に、虫歯より歯周疾患の予防がメインとなります。それ故、歯みがきの指導も、歯周疾患向けの歯みがきの仕方を教えることになります。

 日本で、一般的に行われている歯みがき法は、バス法、スクラビング法と呼ばれるものです。歯面に対して45度の角度で歯ブラシを当て、前後に数ミリずつ振動させるやり方(バス法)と歯ブラシの角度が90度にして振動させます(スクラビング法)。実際、バス法は柔らかく、細い毛の歯ブラシで、やさしく磨くのは難しく、スクラビング法は強い力で磨くと歯肉退縮の原因になります。両者を混ぜたような歯磨き法を指導しています。歯みがきのコツはできるだけ、力を入れずに、あまり前後に動かさないことですが、意外にこれを守るのは難しく、かなり力を入れ、前後に大きく、動かして磨く方が非常に多くいます。若い女性の場合は、元々歯肉が薄いので、硬い歯ブラシで強く擦ると、歯茎が下がり、知覚過敏になる人も多く、磨きすぎも気をつけなくてはいけません。

 アメリカの歯科医師会(ADA)はテレビコマーショルをよくしますが、テレビゲームの変なキャラクターを使った広告があります。またADAが推奨しているスローガンは一日“2回、2分間の歯みがき”ですが、実際の歯みがきの仕方の動画を見ても、かなり適当ですし、どうしてあんな大きな歯ブラシを使うのか、笑っちゃいます。最後に舌の掃除、これは口臭予防にはいいことです。それに比べて日本のサンスターの指導は細かい。御国柄が出ていておもしろいと思います。

 歯磨きというとバカにされるかもしれませんが、きちんとした歯磨きをすれば、少なくとも虫歯になることはありません。歯科医になってから虫歯が新たに出来た歯科医、衛生士はあまり見かけませんので、歯磨きで虫歯は予防できます。ただ歯周疾患については、遺伝的な要因もあり、また加齢に伴い進行するものですから、歯磨きだけで予防できるものではありません。定期的な歯科医院での診査と歯のクリーニング、歯石除去などが必要です。かなり進行を遅らせることは可能でしょう。


 85歳以上を超高齢者、100歳以上は百寿者と呼ぶようですが。長生きして元気なひとは食欲があるような気がします。80歳を過ぎても、若い人と同じくらいの量を食べるひとや、好きなものを食べたさに遠くまで外出したりするような老人は元気なひとが多いようです。ただ老人の方がよく服用される薬、降圧剤、抗うつ剤の中には唾液分泌を減らす副作用があり、それでなくても老人では唾液量が若者の数分の一になるので、入れ歯などをしていると痛くて咬めないということになります。こういった場合も、最近はよいゼリーがあり、入れ歯の下に入れることで、痛みを軽減できることもあります。今日の晩飯は何かなあと思うことが、元気の秘訣のように思えます。そのためには、痛みがなくても定期的に歯科医院に行くことが大事ですし、できれば何もしない歯科医院が一番いいです。行くたびに、あちこち治すような歯科医院はやめた方がよいでしょう。

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