2015年11月15日日曜日

どこで矯正治療を受けたらよいか


 「どこで矯正治療を受けたらいいのか」と患者さんから質問されます。矯正治療も人間を対象にした医療ですので、常に不確実性があり、失敗があります。いくら高い費用を払っても治療結果に満足いかないことがあります。これがなかなか理解していただけませんが、例えば風邪をひき、内科に行って薬をもらうとしましょう。毎日、薬を飲んでもなかなかのどの調子が悪い。こうした場合、内科の先生のところに行って、なかなか治らないのですが、どうなんでしょうかということはあっても、治らないから治療費を返せ、慰謝料を払えという患者さんは少ないと思います(実は増えているのですが)。こうした問題は自費治療である矯正治療では保険治療より多くなります。そのために治療開始前にはできるだけのリスクを説明して治療をしますが、あまり言い過ぎると、怖がって誰も治療をしません。この医療のもつ不確実性と不安を与えないというバランスが難しいと思います。

 それでも矯正治療を長年していますと、こうした失敗体験も多いため、リスク回避の方法を知るようになります。これだけは症例数をこなさなくてはできないでしょう。さらにこうした問題を多くの専門家と一緒に協議して対策法を練る、あるいは発表して批判を受けることなどにより、より失敗のリスクを下げる、軽減することができると思います。

 先の「どこで矯正治療を受けたらいいのでしょうか」との質問でも、簡単な症例、矯正治療で言えば、歯がでこぼこした叢生症例などは、昔はバカチョンケースと言っていましたが、一般歯科の先生でも十分に治せるでしょう。ただこうした症例でも小臼歯のきちんとした咬合関係を築くのは難しいもので、多くの症例ではただ並べただけになっています。一般歯科医の先生の症例で、舌側からみて、きちんと咬んでいるケースをみることは少ないと思います。さらに出っ歯、反対咬合や開咬の傾向のある叢生では、でこぼこが治るにつれ、次第にかみ合わせがおかしくなる場合もあり、矯正歯科で30年以上してきた私でも、確実に100%治せる症例は一例もありません。私の場合で年間100-120症例、開業して20年、それまで大学でのケースを含めると3000ケースくらいは経験しています。その間、毎年3、4回の学会参加、症例発表、論文発表などを行っています、一般歯科では多いところでも矯正患者は年間10-20例で、例えば開業5年の先生ではそれまでの勤務医のところの経験も合わせても100例はないでしょう。1/30となります。症例数は必ずしも治療技能を示すものではありませんが、少なくとも参考になるでしょう。

 それ故、まず歯科医院のホームページがあれば、院長の経歴をみてください。日本矯正歯科学会に入っていない先生は、ある意味モグリと考えてもよいでしょう。他の科、整形外科を標榜する先生で整形外科学会に入っていない先生はいないと思います。最新の研究結果が不明となります。次に大学の矯正歯科講座にいたかを調べてください。確かに大学の医局にも残らず、すぐれた臨床をしている先生もいますが、基本をしっかり学ぶためには少なくとも大学の矯正科には5年以上いる必要があるでしょう。認定医や専門医があれば、少なくとの標準的な治療をしていると思います。

 あとは何人かの先生と相談し、相性を見るのがいいでしょう。治療が難しくなった症例でも先生が変わると不思議にうまくいくことがあります。先生の能力とは別の要素で、相性があるのかと思うことがあります。色々な要素が関係するのでしょうが、話してみてこの先生とは相性がいいと思える先生を選んでください。

 矯正治療を一度、治療に入ると、そちらで治療を最後まで続けることになります。専門家からみて、あまりにもひどい治療でも、こちらに来るようにいえません。昔、かなり怒った経験があります。これは患者さんに虫歯があったので、その治療を一般歯科の先生に依頼しました。ところがその先生から近いからうちで矯正治療しなさい、転医を勧められたと言うのです。これはよくありません。逆に一般歯科で矯正治療を受け、不満に思って当院に来た患者さんでも、決して転医は勧めず、先生とよく相談するように言います。一度、検査を受けて治療に入れば、よほどのことがなければ、最後までその先生のところでの治療となります。いくら患者さんが望んでも、残念ですが、治療している先生からの依頼がなければ、お断りいたします。治療途中での転住、あるいは中断(先生と合わない場合)の治療の継続、費用の清算についても、きちんと答えてくれるところもいいでしょう。

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