2016年2月5日金曜日

インコグニート ブラケット

 2月2日から5日まで大阪で開催されたインコグニートの2日間講習会に参加してきました。この時期、例年、高齢の母親の様子を見るため、大阪に帰省し、ついでに講習会に参加することにしていますが、今年は思い切って舌側矯正の講習を受けることにしました。臨床医にとっては、こうした講習会は新製品がでてすぐより、数年してこなれてから受けた方がよいと思います。

 私が最初に舌側矯正に触れたのは、1990年ころだったと思いますが、Ormcoのカルツと呼ばれる装置を試しました。模型を特別な平行測定器に装着し、ブラケットの位置決めをして、後はフリーハンドで歯にブラケットを装着したような気がします。結果は惨憺たるもので、途中からは通常の唇側のブラケットに交換して治療を終了しました。2例くらいしましたが、結局はものにならず、そのまま諦めました。

 その後、神奈川の藤田先生の舌側矯正や東京の竹元先生のSTBなどの講習会や、さらに長野の廣先生は東京の松野先生によるトレースを使った装着方法などがでて、かなり使いやすくはなったものの、面倒くさくなり、そのままにしていました。ユニテックのインコグニートも78年前に登場しましたが、技工代が高くで、さらに治療方法に疑問があったため、そのまま放置してきました。ところが周囲の矯正医に聞くとこのインコグニートの評価が高いようです。そこでする、しないは別に、知識としてインコグニートも知っておかなくてはと思い、今回受講したわけです。

 講習を聞いてみて本当に良かったのは、簡便と言われているインコグニートでもきれに仕上げるにはかなりの経験と技術がいるようです。講師の杉山先生の症例は本当にうまく仕上げられていて、上顎前突のケースでは唇側矯正よりもきれいにトルクと上顎切歯の後方移動が達成されており、むしろ唇側より舌側の方がきれいに治ることを知ったのは驚きでした。ただこの状態を達成するのは、杉山先生のように多くの症例と細心の注意と工夫が必要なことはいうまでもありません。ケース数が少ないと、ここまではうまくできないと思います。そうした点で簡単になったとはいえ、インコグニートもかってのスタンダードエッジワイズの中にストレートワイヤーが入ってきたように、だれでも送られてきたワイヤーを交換して入れれば治るという単純なものではなさそうです。あくまで治療方法のひとつで、臨床結果は先生の診断技術と経験によります。

 さらに舌側で装置も小さいため、操作性はかなり難しく、杉山先生のところでも一人一人の患者に十分な時間をとって治療しているようです。おそらくアメリカで舌側矯正が普及しないのは、こうしたチェアータイムの増大を嫌ったことも影響していると思います。チェアータイムの減少、通院間隔を延ばすのを狙ったメタルのデーモンブラケットを使う国ですから、こうした面倒な装置は使いにくのでしょう。

 インコグニート導入の関門のひとつにシリコン印象があります。一般歯科の先生に比べると矯正の先生はもっぱらアルジネート印象しかしませんので、シリコンによる精密印象には慣れていません。ましてや全顎にわたり問題のない印象をとるのは難しく、さらに印象ごとドイツに送るため、仮に気泡や印象面が汚いと再印象になり、その往復でさらに1か月かかります。模型にしないで印象面から印象の善し悪しをみるのは難しいと思います。できれば国内の技工所と結託してそこで模型製作、スキャンをしてもらえば、仮に再印象の場合も時間的なロスは少なく、患者にとってもドクターにとってもストレスは少なくなります。

 症例をみて非抜歯、軽度な叢生症例で、平日の午前中に来られる患者に、上顎のみのハーフリンガルをしてみたいと思います。

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