2017年7月12日水曜日

歯科医院の水で30人の子供が細菌症で病院に



 最近、歯科医院での感染対策、例えば、患者ごとの手袋や切削器具、タービンの交換がなされていない医院が多いと、新聞やテレビで取り上げられ、歯科材料屋のよれば 急にこうした製品の売り上げが伸びているそうだ。ただこれだけははっきり言っておきたいが、これまで100年以上の歯科の歴史の中で、確実に肝炎やエイズなど重篤な感染症が歯科治療を介して患者にうつったという報告例はない。ただここまで騒動が広まると、もはや保険、自費に関わらず、患者に対するこうした感染への配慮は必要な時代となっている。

 当院でも十数年前から、使い回す器具、材料は滅菌し、使い回さない器具、材料はディスポ製品を使うように心掛けている。観血処置を含む、一般歯科ではさらにディスポ製品も滅菌したものを使うか議論の分かれるところであるが、口腔内に限って言えば、手袋、などは必ずしも滅菌したものを使う必要はないとされる。すなわち、口腔内、とくに唾液中には数億の細菌があり、そこに器材が入ると同時に一瞬に感染する。実際、細菌数だけでみれば、口腔内は肛門より汚く、こうした汚染された環境内では滅菌した器具、器材を使うというよりは、汚染した器具、器材をきれいにすることが重要となる。できればできるだけディスポを使いたいところである。

 矯正歯科で言えば、プライヤーやミラー、ピンセットのような器具、タービン、電気エンジンなどはオートクレーブで滅菌したものを使い、ワイヤーやゴムはディスポを使えばよい。ただ昨今、問題になっているのはこれだけではなく、歯科用ユニット内の水で、作年、これに起因した小児の口腔内感染症がアメリカで問題になった。CNNニュースの一部を示す。

歯科医院の水で30人の子供が細菌症で入院
http://edition.cnn.com/2016/10/11/health/california-dental-water-bacteria/index.html

アナハイム、カリフォルニア州— カリフォルニア南部の病院へ30名の小児が健康への長期の影響を持つ病気で搬送された。歯科医院の水による感染によるとされ、歯科における細菌感染のリスクを改めて惹起するものとなった。すべての小児は歯根、歯髄切断がなされ、オレンジ州のヘルスケアー代理店のマシュー・ザーハン先生によれば処置中に水によって感染したとされる。アナハイムの小児歯科グループの追跡調査によれば、患者は3歳から9歳の子供で、3月から7月に歯科医院を訪れた。“数百名の患者が歯髄切断をしており、少なくとも次の数週間、数ヶ月にはもっと多くのケースに症状がでるでしょう。”とザーン先生は言う。さらにマイコバクテリア膿胞と呼ばれる感染は、数週間、数ヶ月していから症状がはっきりすると言う。感染した歯の周囲の腫脹、赤み、痛みなどが起こり、ケースによっては細菌が歯肉や骨に広がる。ザーン先生によれば、感染が骨そのものに及ぶと骨を切除する必要があり、そうなると子供にとって長期の問題となる。細菌は流れのない停滞した水の中で増殖sするとされ、歯が充填され、歯の中に細菌が溜まってしまう.こうした弱い細菌、マイコバクテリア菌に感染しても通常は多くの人では洗い流されてしまうが、歯の中に一旦、入ってしまうと、その中で増殖する。カリフォルニの歯科医師会ではアナヘイムの子供歯科グループが適切な処置をしていたか調査している。この会社の他の診療所では感染は発生していない。カリフォルニア州では毎日、水のラインは少なくとも2分間は流しっぱなしにするように指示している。作年も、ジョージアでも同じようなことが起こり20人の子供が歯髄切断で症状がでた。適切な感染しない水あるいは停滞しない水のラインを作ることが重要である。

 この論理でいくと、子供だけでなく、成人の歯髄処置では、滅菌された水あるいは少なくとも感染してない水を使うことが重要であり、そのための歯科用ユニットの水ラインを考える必要がある。ところが国産歯科用ユニットのメーカーで、ユニット内の水ラインを配慮したものは少ない。歯科用ユニットは内蔵給水型の水ラインを備えている必要があり、それが可能なのはアメリカのエーディックとイタリアのスタンウェーバーくらいで、オプションで取り付けられのが、フィンランドのプランメカ、ドイツのカボとシロナで、日本製では昔はタカラができたが、今はボトル供給型のユニットはない。


水の問題については、日本では塩素を水道水に入れているため、アメリカの水より腐りにくい(細菌が発生しにくい)ので、こうした水による感染は非常に少ないと思われる。一方、アメリカでは確かタービン、スリーウエイシリンジからの水の細菌を診療所で定期的に測ることが義務つけられており、それでもこうしたことが起こるのは不思議な気がするし、逆に全く測定されていない日本で何もないのも不思議な感じがする。

学生時代のライターだった玉澤かおる先生が歯科用ユニットの水の汚染を研究し、あまりにひどいことを指摘したが、その話題は封印され、十数年がたち、今度は玉澤佳純先生が感染対策仕様の歯科用ユニットを開発したが。その結果をみても次亜塩素酸などの消毒をしないとかなり高い値にあることがわかる。消毒システム、内蔵型給水システムでない歯科ユニットの細菌はもっとひどいと思われる。
https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19390489/19390489seika.pdf

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