2017年7月7日金曜日

国際矯正用インプラント大会(WIOC 2017)


 今週の日曜日から木曜日まで実家のある尼崎に帰省していました。最近は夏休みが終わる8月末くらいに帰省するのですが、今年は7月2日から第9回国際矯正用インプラント大会(World Implant Orthodontic Conference)が神戸の国際会議所でありましたので、それに合わせて早目に帰省しました。

 私のところで矯正用インプラント、アンカースクリューを使い始めて6、7年になり、すでに300人ほどに使用しています。成人の患者さんではほぼ100%使っていると思います。口腔外科の先生のところで植立してもらっています。矯正の分野では、その治療方針、とくにマルチブラケットのフォースシテテムの核となるのは、アンカー(加強固定)です。歯を抜いてその隙間を閉じる場合、通常のフォースシステムでは空隙の両端の歯が動きます、片方の歯だけ動かし、別の歯を動かさないようにするには、あたかも錨で船が動かないように止めておく必要があります。これをアンカーと言います。

 日本人の多くの症例では、でこぼこと歯の前突が同時にある場合が圧倒的に多いと思います。その場合、小臼歯を抜いた空隙は前歯のでこぼこの解消と前歯の後退に確実に使われる必要があります。以前はヘッドギアーという装置を大人でも9時間以上使ってもらいましたが、実際にこの装置を使うのは相当抵抗があります。矯正用アンカースクリューのおかげでこうした問題もかなり減りました。ただ脱落率は高く、成功率は60%程度で、研究報告であるような90%以上というのは、無理と思います。他の先生に確認してもこの程度です。ただこれでも以前に比べてプラス面が多く、大変助かっている。

 さらにここ数年は、こうしたパッシブな使い方だけでなく、よりアクチブに使う方法が多く紹介されている。今回の学会でもほとんどの報告はこうしたアクチブな使い方を紹介しています。開咬、大臼歯の遠心移動、切歯の圧下、挺出、サージェリーファーストへの応用などです。

 とりわけ興味を持ったのは、反対咬合症例に対して上顎と下顎の骨面に矯正用チタンプレートを取り付け、III級ゴムを使う治療法です。スイスの研究者によると上顎骨で平均で5mmの前方移動ができるといいます。この値は大きい。帰宅して紹介されている論文を調べてみると、ベルギーにある歯科用インプラントメーカが作っているフックのついた2穴のチタンプレートを使っています。術式は簡単で、口腔粘膜を剥離して深さ5mm程度の小さなチタンねじで、上下骨の硬い部分に固定し、そこに上顎の大臼歯部から下顎の犬歯部までゴムをつけてもらう。上顎骨前方牽引装置ではフレームが目立つため、学校にはつけていけないが、ゴムであれば問題ありません。論文では上のみにつけたチタンプレートから上顎骨前方装置を結ぶよりはIIIゴムの方が成績がよい。口蓋裂の、それも11歳以上のケースで使っていた報告もあったので、症例によってはチャレンジしたい。ただ日本では矯正用チタンプレートの種類は少なく、SASというものしかないが、材料費だけで上下4枚と12本のネジで10万円近くかかり、費用的な問題がある。

 反対咬合症例を歯だけで治す場合、通常、咬合平面が時計廻りの回転をするが、そうすると、笑うと下の前歯しか見えないことがあります。患者さんからは、かみ合わせがきれいに仕上がっても怒らます。こうした反対咬合の症例では、理想的には咬合平面を反時計廻りに動かしたい。上顎では上顎切歯を挺出し、大臼歯を圧下する。それにより下顎のオトガイ部が後方回転しまう。矯正用アンカースクリューを小臼歯部の高い位置につけ、そこにワイヤーアームーで上顎切歯が挺出するような力をかける。いい方法で、ケースによっては使ってもよいと思います。

 またアンカースクリューを使った大臼歯の圧下は、私もよくしますが、せいぜい12mmくらいでなかなか難しいものです最新の矯正用インプランの成果をしることができ、非常に有意義な時間であった。

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